コンビニ・エバポ第26弾
導入事例紹介(ユーザーズボイス)
600µLの極少量でも濃縮が行え、全反射蛍光X線分析法の高感度分析が実現できました!
今回は、汚染水中のウランの全反射蛍光X線分析をテーマとされている吉井様へお話を伺いました。
(インタビュー先:国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
放射線医学総合研究所 計測・線量評価部 放射線計測技術開発チーム 主幹研究員 吉井 裕 様)
※ コールドランの様子
吉井様の研究内容
- 我々はウラン汚染水を迅速かつ簡便に分析する方法の開発を行っております。
コンビニ・エバポ 導入のきっかけ
- 研究室に良く来ていた代理店さんがコンビニ・エバポのカタログを持って来て、デモを見てほしいというお話だったので、デモを行い、期待できる装置だったので購入しました。一般的なエバポレーターにくらべ安価なので、現在では2台購入して作業効率を向上させています。
コンビニ・エバポの活用方法
- 分析の感度を向上させる為に、コンビニ・エバポを利用しています。ウランに汚染された水を模して模擬ウラン汚染水を作成するのですが、その作成した試料溶液を10倍に濃縮して、全反射蛍光X線分析を行っています。
- 全反射蛍光X線分析法 (TXRF : total reflection X-ray fluorescence)はX線を空気層から極めて小さい視射角で物質に入射した際に全反射する特性を利用した、ほぼ標的から放出された蛍光X線のみ観測することが可能な測定法です。ガラス基板に滴下・乾固させた試料に対し全反射蛍光X線分析を行っています。
<溶媒・容量等の実験条件>
- 作成した模擬ウラン汚染排水600µLを1.5mLまたは2.0mLエッペンチューブに入れて100℃で濃縮を行っており、その頻度は多い時で毎日、平均して週1回程度となっています。おおよその1回の作業時間は40分です。
導入による変化
- 以前は、溶媒が600µLと非常に少量規模のため、濃縮そのものを行っておりませんでした。
- その条件で、法令排水基準の1/10までのウランが検出可能でしたが、(コンビニ・エバポで)600µLを完全乾固して60µLの希硝酸などで溶解することで10倍濃縮が可能となり、検出下限値が法令排水基準の1/100に達しました。600µLから短時間で完全乾固させる方法を当時は思い浮かびませんでした。
実際使ってみて感じたこと
<利点>
- 600µLの極少量でも濃縮できて迅速かつ簡便に行うことが出来る点でしょうか。特有の吸引式ボルテックス濃縮によって、耐圧性の容器を用いなくて良いため、我々のようにエッペンチューブでそのまま濃縮できるのは非常に便利だと思います。
<課題やご要望>
- 今後は、酸溶液(4M硝酸など)も濃縮していきたいと考えているのですが、完全に対応している訳ではないこと、試料をセットする部分が浅いので、丈の長い細い容器で少し濃縮しづらいこと、でしょうか。
取材者のコメント
今回お話を伺った吉井様は、従来の蛍光X線分析よりも「高感度」かつ、「法令排水基準を大幅に下回る検出基準でウラン汚染水を高感度測定可能な」全反射蛍光X線分析を開発していらっしゃいます。
600µLという少量でもエッペンチューブでそのまま濃縮が行えるコンビニ・エバポによって、新しい分析法の開発と日々の実験作業の時間短縮にも繋がったことが今回の取材から伺えました。
また、ご購入後、研究室での実績を評価していただき、さらにもう一台取り入れていただけた、という経緯は私たちにとって光栄なことです。
そして、今回のように吸引式ボルテックス濃縮法によって好きな容器を扱うことができ、省スペース設計されたコンパクトサイズな装置で場所も選ばない、という特徴を有するコンビニ・エバポは、研究者様の作業効率化の可能性を拡げるお手伝いが可能です。
(取材担当:菊地)
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