HPLC分取試料の脱塩時における回収率向上(グリチルリチン酸)
はじめに
・複数の成分を含む試料から特定の成分をHPLC分取する際には、ピーク分離の観点から移動相に不揮発性の無機塩を使う場面があるが、分取後、固相抽出により分取分画の脱塩を行う際に移動相中の有機溶媒の影響により試料の回収率が低くなるという
課題がある。
・コンビニ・プレップは、固相への試料添加時にVVC法(Fig.2)を応用した「吸引攪拌」により試料溶液中の有機溶媒を優先的に気化させることで、回収率への影響を軽減できるという特徴を有する。
試料
・グリチルリチン酸
実験
・試料溶液
グリチルリチン酸からHPLC分取したメインピーク成分(Fig.3)
移動相:50mM NaH2PO4溶液/アセトニトリル(60/40)
カラム:Inertsil ODS-4
・脱塩
吸着剤:SP207(芳香族系合成吸着剤)、10g
抽出操作:①試料10mL添加、②水10mLで洗浄、③メタノール10mLで抽出
*この時、①(試料添加)と②(水洗浄)の間に、60分間リザーバー内で「吸引攪拌」を行うことで、どの程度回収率が向上するかを確認した。
結果
・Fig.5に脱塩前後の試料溶液(乾固時)の様子を示すが、脱塩処理により移動相由来の塩が除かれていることがわかる。
・Fig.6に示すように「吸引攪拌」を行わずに洗浄・抽出を行った場合の回収率は「66.0%」であり、含有していた有機溶媒(アセトニトリル)が試料の吸着剤への吸着を妨げていることがわかる(その結果、水洗浄時に排出されてしまう)。
・一方、「吸引攪拌」行った場合の回収率は「99.3%」であり、「吸引攪拌」を行うことで含有していた有機溶媒が気化し、ほぼ全量を固相抽出によって回収できることが確認された。
・以上より、有機溶媒を含有している試料の脱塩時に「吸引攪拌」を行うことで試料のロスを防げるため、貴重な試料を取扱う場合などに有用な手法であると考える。
ご質問・PDFデータのご希望等、お気軽にお申し付けください。