グリセライドの脂肪酸組成解析
はじめに
・近年、カラダに良い油が着目されており、食用油に対する関心が高まっている。各食用油を特徴付けているのはグリセライドを構成している脂肪酸であり、どのような脂肪酸から成るグリセライドなのかを簡便に解析できる分析手法はとても重要である。
・今回、ionRocket DART-QTOFMSを用い、精密質量測定及びMS/MS測定を活用した食用油中のグリセライドの脂肪酸組成解析事例を報告する。
試料
・食用なたね油
・食用調理油(中鎖脂肪酸含有)
方法
・分析システムは、DARTイオン源と質量分析計(QTOFMS) の間にionRocket (昇温加熱デバイス) を接続して構成した(Fig.1)。
・試料3μLをPOTに入れ、室温から600℃まで100℃/minで昇温加熱しながら質量分析を行った。
結果
食用なたね油のヒートマップをFig.2に示すが、グリセライドと思われる成分が200-300℃区間から検出されていることがわかる。
両試料の200-300℃区間のMSスペクトルを見るとグリセライドが多数検出されていることが確認された(Fig.3)。
なお、帰属結果をFig.3中に記載したように、精密質量による組成解析とMS/MSスペクトルによる構造解析を行うことによって、各グリセライドの構成脂肪酸を容易に確認することが可能であった。一例として、Fig.4に食用調理油中のm/z 654.57のMS/MSスペクトルを示すが、それぞれの構成脂肪酸が外れたフラグメントピークから構成脂肪酸を読み取ることが可能である。
このように本手法はQTOFMSと組合わせることで、試料を前処理することなく、一度の測定で、グリセライドの構成脂肪酸を容易に解析できるため、油脂類の研究開発や品質管理などの場面において有用な手法になることが期待される。
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