フッ素ゴムの分析
目的
フッ素ゴムは耐熱性及び耐化学薬品性に優れたゴムです。ポリマーの経時劣化を調べるために、使用履歴の異なるフッ素ゴムの分析を行った。
実験方法
イオン源 : ChemZo/昇温加熱デバイス バイオクロマト社製
質量分析計 : compact QTOF Bruker社製
測定方法 : 使用履歴の異なる未使用品及び長期使用品の小片を昇温加熱デバイスを用いて室温から600℃まで昇温しながらMS(ネガティブモード)を測定した。
解析方法 : Polymer Engine及びDataAnalysisを用いてTIC及びフッ素ゴムの繰り返しユニットを抽出し、比較した。
結果
Fig.1にTICを示した。高温度域(500-600℃)では長期使用品のTIC強度が数倍高いことが分かった。これは長期使用品の方が樹脂の劣化が進み、高温度域でより多くの熱脱離成分が検出されたためと思われる。Fig.2に高温度域のマススペクトルを示した。両者は強度は異なるものの類似したマススペクトルであることが分かった。しかし、複雑なマススペクトルであるため、このマススペクトルを解析して、モノマーに由来する繰り返し構造を把握することは難しい。
結果
Fig.3にPolymer Engineの解析結果(バブルプロット)を示した。Polymer Engineはモノマーに由来する樹脂の繰り返しユニットをマススペクトルから抽出する解析ソフトで、Fig.2のような複雑なマススペクトルの解析に非常に有効である。解析の結果、長期使用品は未使用品に比べてフッ素ゴムの繰り返しユニットであるC2H2F2及びC3F6の検出数が多く、未使用品では不検出であったC3F6を18個1)検出したことが分かった。高温度域でのバブルプロット及びTICの違いは、長期使用品のフッ素ゴムが未使用に比べて劣化したためと思われる。ChemZoと昇温加熱デバイスを組み合わせた質量分析及びPolymer Engineを用いたマススペクトル解析により、樹脂の経時劣化の程度を比較することが出来た。1): KMDが等しいグループ(横に並んだ5個以上のバブル)を1個とした数えた。
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