高分子量HALSマーカーの検討
はじめに
高分子量HALSは、抽出性や揮散性が低いことから種々の樹脂や塗料に汎用されている。しかしながら、その性質故に材料中からの分析は非常に困難である。前報(JI-051)にて、高分子量HALSは部分構造を反映したフラグメントピークをマーカーとすることで分析が可能なことを紹介したが、本報では下記4種の高分子量HALSのマーカーとなりうるフラグメントピークについて報告する。
試料
・Chimassorb 119(N-CH3型HALS) ・Tinuvin 622(N-X型HALS)
・Chimassorb 2020FDL(N-H型HALS) ・Adekastab LA-63P(N-CH3型HALS)
方法
・分析システムは、DARTイオン源と質量分析計の間にionRocket (昇温加熱デバイス) を接続して構成した(Fig. 1)。
・試料 0.2mgをPOTに入れ、室温から500℃まで100℃/minで昇温加熱しながら質量分析を行った(測定時間:6分)。
結果
Fig.2~5に示すように、各試料のTICが上昇している温度域(300-400℃)のMSスペクトルには複数のフラグメントピークが検出されており、その中には各高分子量HALSの特徴的な部分構造を有するものが認められた。これらは、高分子量HALSの熱分解によって生成した成分であると考えられる。この事より、熱脱着・熱分解DART-MSで各種材料の直接分析を行う際に、これらの特徴的なフラグメントピークをマーカーとすることで、高分子量HALSの分析が簡便に行えることが期待される。なお、Table.1に示すように、前報(JI-049)で紹介したHALSの型を判別するために用いられると考えられた「HALSマーカー」についても確認したところ、それぞれの高分子量HALSの構造を反映したものが検出されていたことから、これらもHALS分析時の有用情報として活用できることも明らかとなった(有無及び型の確認)。
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