食品への洗浄剤誤用確認時の迅速分析
はじめに
・飲食店や一般家庭などにおいて、洗浄剤を水や油と勘違いして食品に混入させる事例(誤用)が発生することがある。
・洗浄剤の混入確認には機器分析が必要となるが、食品からの洗浄剤抽出などの前処理や、用いる分析手法の選定及び測定条件の検討が必要となり、比較的手間のかかる分析となる場合が多い。
・今回、ionRocket DART-MSを用い、食品中の洗浄剤を迅速簡便に分析した事例を報告する。
試料
・家庭用洗浄剤
・洗浄剤混入焼きそば(麺)
*油と洗浄剤の誤使用を想定し、焼きそば1人前(約150g)に対し、洗浄剤大さじ1杯(約15mL) の比率で混合
方法
・分析システムは、DARTイオン源と質量分析計の間にionRocket (昇温加熱デバイス) を接続して構成した(Fig. 1)。
・試料2mgを無処理のままPOTに入れ、室温から600℃まで100℃/minで昇温加熱しながら質量分析を行った(測定時間:7分)。
・KMDプロットの作成には、KMD解析ソフト「Spectra Scope(バイオクロマト製)」を用いた。
結果
Fig.2に「洗浄剤」と「洗浄剤混入焼きそば」の測定結果を示す。「洗浄剤」には界面活性剤などの特徴的な成分に由来するピークが明確に検出されており、これらが「洗浄剤混入焼きそば」からも検出されることが確認できた。Fig.2のMSスペクトルからBase Unitを「C2H4O(エチレンオキサイド)」としてKMDプロットを作成したところ、「アルキルアミン類」や、横一列に並ぶ 「ポリオキシエチレンアルキルエーテル類」のドットが両試料に共通して存在していることが確認できた。参考として「焼きそば」のみのKMDプロットを確認したところ(MSスペクトルは非表示)、これらのドットが「洗浄剤」由来であることが容易に確認でき、本手法では試料の前処理を行わずに測定しても食品中の他の成分の妨害を受けづらいことがわかる。このことから、本手法は迅速かつ簡便な食品中からの洗浄剤分析に適した方法であると考えられる。 以上より、ionRocket DART-MSは、食品に誤用・混入等が起きた場合の効果的な原因究明手段として活用されることが期待される。
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