化粧品用シリコーン原料の構造情報把握
はじめに
シリコーンは、安全性や安定性が高く、またその機能性から消泡剤、乳化剤、湿潤剤、洗浄剤などの様々な用途で用いられる非常に重要な化粧品原料である。シリコーンには構造や分子量などのバリエーションが数多くあるが、それらに関する情報を機器分析から把握することは比較的困難である。そこで、ionRocket DART-MS分析及びKMD解析*)を行ったところ、簡便にシリコーンの構造情報が得られることが示唆された。
*KMD(Kendrick Mass Defect)解析:精密質量に基づき、構成成分の元素分布を視覚的に解析する手法
試料
①ポリエーテル変性直鎖状シリコーン(HLB:低)
②ポリグリセリン変性分岐状シリコーン(HLB:中)
方法
分析システムは、DARTイオン源と質量分析計の間に、ionRocket(昇温加熱デバイス)を接続して構成した(Figure 1)。
試料(数μL)をPOT(試料台)に入れて、室温から600℃まで100℃/minで昇温した。測定データは、ionRocket Analysis(解析用ソフト、仮称)にてKMD解析を行った(開発:ナノコードシステムズ)。
結果
Figure2には、トータルイオンカレントグラム(TIC)を示す。Figure3には、100~300℃区間のマススペクトルをKMD解析した結果を示す。いずれの試料も1系統の成分ではなく、それぞれジメチルシリコーン部分とポリエーテル部分の繰返構造を有する2系統の成分の存在が示唆された(共通の繰返構造を有する成分はKMDプロット上で横方向に並ぶ)。
また、本解析用ソフトでは、KMDプロット上で色付けしたドットがマススペクトル上に反映されるため(Figure4)、マススペクトルからの詳細な構造解析も容易に行うことができる。このように、ionRocket DART-MS分析並びにKMD解析を行うことで、シリコーンの構造情報を簡便に得ることができるため、原料受入れや異常発生時など品質確認などを簡便に行える有効な手段である。
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