有機モリブデン系潤滑油添加剤の迅速分析
はじめに
潤滑油は、機械や自動車が正常に動作するために欠かすことのできないものであり、また、高機能化や省エネ化へのカギを握る重要な構成要素である。潤滑油の機能向上のためには様々な添加剤が配合されるため、潤滑剤の特性を評価する際には、それらの添加剤を分析する場面が生じることがあるが、煩雑な前処理等が必要となり容易に行えないことが多い。
今回、ionRocketを用いて、有機モリブデン系潤滑油添加剤を分析したところ、無処理で迅速に添加剤情報を得られることが示唆された。
試料
有機モリブデン系潤滑油添加剤(液状、市販品)
*SDS成分情報:「鉱油」「ポリオレフィンアミドアルケンアミン」「モリブデン酸特殊混合アミン塩」
方法
分析システムは、DARTイオン源と質量分析計の間に、ionRocket(昇温加熱デバイス)を接続して構成した(Figure 1)。
試料(数μL)をPOT(試料台)に入れて、室温から600℃まで100℃/minで昇温した。ポジティブモードでの測定の後、DARTイオン源をつけたままネガティブモード用質量校正物質(製品名:Calibration Solution (Negative)、製品番号:MS-CAL-N)を用いて質量分析計の校正を行い、ネガティブモードでの測定も実施した。
結果
Figure2には、得られたマススペクトルから「化学工業用データベース Compound Search」を用いて添加剤推定を行った結果を示す。解析結果より、本試料中にはSDSに記載のなかった酸化防止剤や潤滑剤等も配合されていることが示唆された。
Figure3には、MS/MS測定で構造推定を行った結果を示す。解析結果より、四級アンモニウム化合物の存在が確認されたことから、モリブデン酸の対イオンであると考えられた。
Figure4には、DARTネガティブモードでのマススペクトルを示す。500~600℃という高温域で特徴的なスペクトルパターンを検出したが、同位体理論パターンと照合した結果、モリブデン酸の存在が示唆された。
以上の結果より、ionRocket DART-MS分析は、前処理無く迅速に潤滑油中の各種添加剤の分析を行える有効な手段である。
デモ依頼・ご質問等受け付けております
「DART-MS分析用 昇温加熱デバイス ionRocket」についてはこちら