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追いがつおの香り立ち評価

アプリケーション

はじめに

「お出汁を食べる」というコンセプトの飲食店において、店舗で削りたての本枯節を使い、お客様の目の前で「追いがつお」を行う出汁しゃぶが提供されている。「追いがつお」を行う瞬間に出汁の香りが目の前に広がることが魅力の一つであり、
そのために、店舗では下記のような工夫がなされている。
・極限まで薄くした“0.01mm“ の削り節を使用
・食事を口にした瞬間に香りを強く感じるために“深い容器“を使用
今回、Volatimeship DART-MSを用いて、上記の工夫が“官能評価“だけではなく、機器分析的にも裏付けられることを確認した。

試料

本枯鰹節
(0.01mm、0.03mm*)
*0.03mm:一般的な厚み

    
  

方法

Fig.1の分析システムを用い、下記の手順で測定を行った。
1.本枯鰹節を“0.01mm”、“0.03mm”に削る
2.「かえし」30mLを湯煎で80℃に保温する
3.「かえし」に、削り節約0.2gを投入
4.投入直後の香り立ちを測定する(容器上部を吸引して測定

     

結果1:厚みの違い

*SPME-GC/MS 及びDART-MSにより本枯節中に含まれている香気成分の同定を行ったところ「トリメチルアミン」を検出したため、以降の検討では、香りの“質”ではなく、“タイミングと強さ”を評価する目的で、高感度で検出されたトリメチルアミンを指標として「追いがつお」時の香立ち評価を行った。

Fig.2左に示すように、「追いがつお」時のトリメチルアミン([M+H]+=m/z 60.08)の検出強度を比較すると、削り節を同量投入したにも関わらず、0.01mmでは0.03mmの20倍以上高い値を示し、また、0.01mmでは投入後約40秒以上放出が持続するが、0.03mmでは10秒以内に減衰することが確認された。このことより、薄い削り節を用いる方が香りの放出強度が高くなり、かつ、放出時間が長くなることが機器分析からも確認され、官能評価を裏付ける結果を得ることが出来た。
なお、Fig.2右に示すように、本測定によりトリメチルアミン以外にも多数の鰹節由来の香気成分と思われるピークが検出されていることも確認された。

 

結果2:容器の違い

Fig.1の分析システムにて、容器に口を付ける際に鼻が来る位置に吸引口をセットし、上記と同様にトリメチルアミンを指標とし、Fig.3に示す“深い容器”および“浅い容器”を用いて、それぞれにおいて料理を食する際の香り立ちを測定した。

その結果、Fig.4に示すように、“深い容器“を使用した方が香りの立ち上がりが早いことが確認された。”深い容器“では、食する際に鼻が覆われ、香りが揮散することなく感じられるためであり、柔らかな出汁の香りに包まれるような感覚で食事を楽しめることが裏付けられた。

 

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