柑橘類の香気成分
目的
ChemZoイオン源を装備した飛行時間型質量分析計を用いて柑橘類の香気成分の分析を行った.
実験方法
イオン源 ChemZo バイオクロマト社製
質量分析計 compact QTOF Bruker社製
測定方法 常温測定;柑橘類(金柑,清美,不知火デコポン,せとか,ネーブル オレンジ)の果皮(3g)をサンプル管に入れ,チューブを介してMSに導入.昇温測定;上記柑橘類の果皮(25mg)を昇温デバイスを用いて200°Cまで加熱し,熱脱離成分をMSに導入.(次ページにせとかのデータのみ記載)
解析方法 Spectra Scope及びData Analysisソフトを用いてマススペクトルから 香り成分を抽出.
柑橘類の果皮は爽やかな香りを醸し出すことから,料理やお菓子を特徴付ける素材のひとつであり, 生理活性を呈する成分を含むことが知られている.本実験では果皮をそのまま食べる金柑と主に加熱して加工食品として利用する4種類のミカン属から発生する香気成分について,常温測定と昇温測定を行い柑橘類間の比較を行った.Fig.1にSpectra Scopeを用いて抽出した常温測定時の香気成分マーカ-を示した.ブランクに比べて大きく増えたイオンは,それぞれの柑橘類に 特徴的な香気成分の候補と言える.
Fig.2にそれそれのマススペクトルを示した.なお,マススペクトルの帰属は標準品との比較で行った.マススペクトルを比較するとどの果皮からもほぼ同様な香気成分が検出されたことが分かった.一方,香気成分の比率はそれぞれで少しづつ異なることが分かるが,そのような違いが柑橘類の香りを特徴付ける要因のひとつになっているのではないだろうか.
Fig.3 に「せとか果皮」の昇温測定時のマススペクトルを示した.m/z 403.1384は精密質量から計算した化学式から柑橘類の果皮に含まれるノビレチンと推定した.ノビレチンはフラボノイドの一種で,抗炎症性や抗がん性などの生理活性作用を持つ と言われているが,果皮を食べる金柑からはほとんど検出されなかった.また, ノビレチンの同族体と思われるC20H20O7及びC19H18O6 も検出することが出来た.
以上のようにイオン源としてChemZoを用いることにより,常温で揮発する香気成分と加熱で脱離する熱脱離成分の両者を同じイオン源で簡便に分析できることを確認した.
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