牛肉のメイラードフレーバー
目的
ChemZoイオン源を装備した飛行時間型質量分析計を用いて牛肉のメイラードフレーバーの分析を行なった.
実験方法
イオン源 ChemZo バイオクロマト社製
質量分析計 compact QTOF Bruker社製
測定方法 180°Cのホットプレートで1分焼いた牛肉(30g)から発生する香り成分をチューブを介してをMSに導入.更に,
みりんあるいは醤油が共存する場合の香り成分についても比較.
解析方法 Spectra Scope及びData Analysisソフトを用いてマススペクトルから香り成分を抽出.
アミノ酸と糖が加熱により反応して生まれるメイラードフレーバーには,果物や野菜の香りのピラジン類,フルーティーな香りのフラノン類やフランチオール類など多くの香り成分がある.
ここでは牛肉を焼いた際に発生する揮発成分を分析することによりメイラードフレーバーの検出を試みた.また,みりんや醤油を掛けた時のメイラードフレーバーの違いについても調べた.
Fig.1にSpectraScopeを用いて解析した代表的なマーカーのEICを示した.Spectra Scopeはイオン強度の変化をRatioとして計算し,マーカーの探索を行うことができる.Ratioの大きいイオン は大きな変化をしたことを示すため,加熱により生成したこのようなマーカーはメイラードフレーバの候 補化合物と言える.Table 1に香り成分のデータベースを用いて行った化合物名の検索結果を示 した.ただし,標準品を用いた同定(MS,MSMS測定)は行っていない.
Fig.2は焼いた直後に発生した揮発性成分の平均化マススペクトル(90秒間)である.各イオンの1~7の数字がTable 1のNo.に対応する.牛肉からピリジン以外はほぼ同様な強度の5成分のメイラードフレーバーを検出できた.一方,牛肉にみりんや醤油を加えた場合は,牛肉由来のメイラードフレーバが抑制される傾向になり,みりんではm/z 127.0388,醤油ではm/z 160.1333の特徴的なイオンを検出した.
Fig.3に各イオンの強度を比較した棒グラフを示した.赤の牛肉と牛肉+醤油はほぼ同様な傾向が見られるが,牛肉+みりんは両者と異なり,m/z 127.0388のイオン強度が極めて高いことが分かった.以上からみりんや醤油のような調味料によって,牛肉由来のメイラードフレーバーが ほぼ同様に発生する場合と抑制される場合のあることが示唆された.なお、m/z 127.0388 及びm/z 160.1333のイオンはそれぞれを単独で加熱した時も検出されていることから,牛肉との相乗効果によるものではなく,みりん及び醤油に由来するメイラードフレーバーと推定した.
本実験手法は牛肉などから生成するメイラードフレーバー及び調味料の影響を把握する方法として有効な分析手法になる可能性がある.
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