Volatimeshipを用いた香り立ちのリアルタイム測定 醤油編
はじめに
DART (Direct Analysis in Real Time) イオン化法は、直接イオン化法のひとつであり、揮発性成分を大気圧下でリアルタイムに検出することを可能にする。さらに、揮発性成分分析用デバイス”Volatimeship”を用いると揮発性成分を効率よく質量分析計に導入することができ、高感度な測定が可能となる。
今回、醤油の香り立ちをVolatimeshipを用いて測定した。
試料
醤油 刺身醤油 (市販品)
方法
分析システムは、DARTイオン源と質量分析計の間に、Volatimeshipを接続して構成した。
40 mLバイアル瓶に醤油を10 mL入れて密栓し、試料を準備した。
空のバイアル瓶をVolatimeshipに装着して質量分析計のデータ取り込みを開始し、醤油が入ったバイアル瓶を取り付け、醤油をさした時を想定した香り立ちを測定した。
結果
醤油の分析結果をFigure 1に、刺身醤油の分析結果をFigure 2に示した。バイアル瓶を取り付けた時を0 secとして表示した。
m/z 109、129、175のExtracted Ion Currentgram (EIC) を比較すると、醤油ではm/z 109が最も強く立ち上がるが、刺身醤油ではm/z 129が最も強く立ち上がる (Figure 1 (B), 2 (B))。
また、醤油と刺身醤油のm/z 129の挙動を比較すると、刺身醤油の方が急激に立ち上がる挙動を示した。
TIC立ち上がり直後のマススペクトルを比較すると、刺身醤油の方が醤油よりも検出されるイオンの種類が多い。これには、製法の違いが反映されていると推測される (Figure 1 (C), 2 (C))。
DART-MSにVolatimeshipを組み合わせたことで、醤油からの揮発性成分の放出挙動(フレーバーリリース)を、秒単位でリアルタイムに観測することができた。
Figure 1. 醤油の分析結果 Figure 2. 刺身醤油の分析結果
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