リアルタイムモニタリング:日本酒の揮発性成分放出挙動
はじめに
・日本酒は、昨今の日本食ブームを追い風に世界中で飲用されている日本の伝統文化のひとつである。
・日本酒をワイングラスで飲用すると、猪口で飲用したときよりも日本酒独特の繊細な香り・口当たり・微妙な色調・粘性などが感じられるようになることが官能評価により確認されている。
・揮発性成分の放出挙動をリアルタイムにモニタリングできる分析装置であるVolatimeship DART-MSを用いて、日本酒の香り方の酒器の形状による違いを視覚化すべく、2種の酒器を用いて測定を行った。
試料
・日本酒(白鶴 大吟醸)
・酒器2種(猪口、ワイングラス)
方法
日本酒30mLを両酒器に入れて、飲酒の際に鼻が来る位置にVolatimeship
の吸引口を設置して、香気成分のリアルタイムモニタリングを行った。
測定は、Fig. 2 の分析システムを用いて下記の手順で行った。
結果
Fig. 3 に示した日本酒から検出された揮発性成分のマススペクトルより、両酒器間で検出成分の種類や量比に差異を認めた。
また、ワイングラスから検出されたが猪口からは検出されない成分(m/z 219.19, C12H26O3など)があることも分かった。Fig. 4 に示したm/z 145.12は、吟醸酒の代表的な香気成分であるカプロン酸エチルであり、この放出挙動(EIC)を見るとワイングラスでは測定開始後の立ち上がりが猪口よりも強く、かつ、時間と共に検出強度が増大する傾向があることが確認された。
実際に両酒器に日本酒を入れて香りを鼻で嗅いだ際、ワイングラスでは猪口よりも日本酒の香りが強く感じられたが、本実験では、この感覚の違いを視覚化することができたと考える。
・Volatimeship DART-MSを用いることで、日本酒の香り方の酒器の形状による違いを視覚化することができた。
※ 本アプリケーションは、白鶴酒造株式会社様との共同研究の一部です。
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