粘着剤のionRocket-DART-MS分析
はじめに
粘着剤の材料分析では、一般にFT-IR・GC/MS・LC/MSなどが用いられており、分析前に抽出・分取・濃縮などの前処理が必要である。試料が極少量しかない場合や、溶剤に不溶の場合には、十分な前処理をおこなうことができないことが問題となる。
ionRocket–DART (Direct Analysis in Real Time)-MS分析では、昇温加熱することによって簡易的に分離しながら直接質量分析をする。本報では、特別な前処理をすることなく、粘着剤の迅速簡便な分析をすることが可能であることを示す。
試料
モデルアクリル粘着剤
(2-エチルヘキシルアクリレート / n-ブチルアクリレート / アクリル酸 = 48.5 / 48.5 / 3)
方法
DARTイオン源と質量分析計の間にionRocketを接続し、分析システムを構成した。
試料を1 μL程度取り、POT(右写真)へ入れ、測定に供した。水酸化テトラメチルアンモニウム (TMAH)を添加する条件では、モデルアクリル粘着剤をPOTに採取した後に、TMAHを直接添加した。
ionRocketの昇温加熱条件は、100℃/minで室温から600℃まで昇温する条件とした。
結果
TMAHを添加することで、添加しない場合(モデルアクリル粘着剤のみの場合)よりも、高分子量成分を検出することができた (Figure 1A, 2A)。
240℃におけるマススペクトルを用いてKendrick Mass Defect (KMD) プロットを作成した。モデルアクリル粘着剤のみの結果では、プロットには規則性が認められないが、TMAHを添加した場合では、いくつかの規則性を持った分子群が観測された (Figure 1B, 2B)。これらの分子群の端、すなわち分子末端の更なる解析を進めることで、重合開始剤の種類の違いや停止反応や不均化反応の生じやすさ、側鎖情報などが得られる可能性がある。
Figure 1. アクリル粘着の測定結果
(A) 240℃でのマススペクトル (B) KMDプロット
Figure 2. TMAHを添加したアクリル粘着の測定結果
(A) 240℃でのマススペクトル (B) KMDプロット
※竹井ら:昇温-リアルタイム質量分析法を用いた粘着剤の分析 ACA2016および第54回日本接着学会年次大会(2016年6月)を元に作成
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