ナイロンの迅速識別
はじめに
ナイロンは、脂肪族ポリアミドという合成ポリマーの総称で、もっとも一般的な高分子材料の一つである。強度が高く、弾力性に優れるため、化学繊維材料として広く普及している。ナイロンにはいくつかの種類が存在しているが、例えば Figure 1に示すように、ナイロン6,12とナイロン6,10は、FT-IRスペクトルが酷似しており、また、DSCによる融点も両方共220℃近傍であるため、識別が難しい材料のひとつである。
今回、ナイロン6,12とナイロン6,10を、ionRocketを用いて直接分析したところ、簡便に両試料の識別を行うことができたため報告する。
試料
ナイロン6,12 および ナイロン6,10 製品 (歯ブラシなど2種 A・B)
方法
分析システムは、DARTイオン源と質量分析計の間に、ionRocket(昇温加熱デバイス)を接続して構成した(Figure 2)。
試料(約0.5mm角)をPOT(試料台)に入れて、室温から600℃まで100℃/minで昇温した。
結果
Figure 3に各試料のトータルイオンカレントグラム(TIC)を示す。この結果からは、両試料の熱に対する挙動が異なっていることが分かるが、配合されている添加剤の影響によることも想定されるため、ここから両者を識別することはできなかった。
次に、 Figure 4に各試料の300℃におけるマススペクトルを示した。この結果からは、試料ごとに特徴的なピークを得ることができ、各ピークを解析したところ今回測定したナイロンの構造に由来する特徴的な熱分解物が確認されたため、ナイロンの種類を容易に識別することができた。
このように、無処理で迅速に分析が行えるionRocketを用いた DART-MS分析は、ナイロンの迅速識別に有効であることが示された。
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